
現状、戸建て住宅で断熱計画を考える場合は冬をメインに設計していることが多いと思いますが、今後は温暖化がますます進み温度の上昇が見込まれることが分かっています。これを踏まえると、冬だけに目を向けるのではなく、今後の温度上昇も意識した断熱計画が重要になってくると考えられます。本連載では、その将来性を考慮した設計についての検討を行います。
前回は、夏場における湿度がどのように変わるのかについて検討しました。今回は将来的に日射量がどのように変化するのかということと、暑い期間が長くなることの影響について検討し、これを踏まえてどのように設計すべきかを考えたいと思います。
今回もゼネコンの株式会社竹中工務店が開発した将来気象データMet.box ※1の2060年のデータと建築設計用気象データArchi Climate※2の2011年から10年間の標準年のデータを利用して検討していきたいと思います。
※1:データは公開されており、以下リンクからダウンロードページにアクセスできます。
将来気象データMet.box
https://www.takenaka.co.jp/news/2024/07/06/
※2:建築設計用気象データArchi Climate
https://climate.archlab.jp/
日射量は将来的には増加する!!
これまでは、地球温暖化によってどのように気候が変化するかをみてきました。しかし、地球温暖化を防止するための対策によっても、気候が変動するとされています。その理由の1つが太陽光発電やバイオマス発電などのクリーンエネルギーが増えることによって、大気中のエアロゾル(大気中に浮遊する微小な粒子)が減ることによるというものです。この現象によって、将来的には地表へ届く日射の量は増えるとされています。つまり、省エネルギー化の努力が実ったとされるSSP1-2.6でさえ、日射量の増加は免れないのです。大阪におけるSSP1-2.6のシナリオに基づいた2060年予測と今の設計でよく利用されている標準年での比較が以下です。4月~9月いっぱいにかけて、明らかに日射量が増えていることが分かります。特に7月や8月は今の倍以上もの日射を受ける日が多くあり、日射遮蔽や遮熱をキチンと設計に盛り込んでおかないと、屋内がとんでもない暑さになってしまいます。
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