引き続き「外皮」をテーマとして「省エネのキホン」的考察を進めます。今回は「住宅の気密性能」の最終回です。
毎度のおさらいから。
連載の第19回で、過去の省エネ基準でも挙げられていた4項目に「省エネのキホン」的2項目を加えたのが下記の6項目です。
1.「漏気(隙間風)を防止して暖冷房負荷の低減、省エネ性、快適性の向上」
2.「断熱材の性能低下の防止、省エネ性、快適性の向上」
3.「繊維系断熱材採用の場合の室内側気密化による防湿効果で壁内結露を防止、耐久性の向上」
4.「計画換気が成立するための出入り口の明瞭化と必要風量を確保し、健康性、省エネ性を向上」
5.「現場測定による数値化で1棟毎の施工精度を証明」
6.「購入者が依頼業者を選ぶ際の住宅性能における重要な指標」
今回は、この中の6.について考えましょう。
■国の基準改正を待たない地方自治体
省エネ規準の義務化実施によらず、住宅の省エネ化に取り組む自治体が増えてきています。
少し前には、東京都の「新築住宅に太陽光発電設備の設置などを義務化する」(設置義務の対象は要件を満たす事業者)というニュースが話題になっていましたね。また、長野県も新築住宅への省エネ性能向上に努めてきた先進県として知られています。
これらを含め、ご存じの方も多いとは存じますが、国の施策とは別で独自に住宅性能の向上に努めている地方自治体のうち、今回特に取り上げたい事例を2つ、ご紹介します。
まずは、鳥取県!
2020年より「とっとり健康省エネ住宅(NE-ST)」の性能基準を定め、認定者が手掛けた認定住宅には、住宅ローンの金利優遇、施主向けの補助金、各種事業者向けの補助金などが適用されます。
また技術研修を受けて認定された業者(設計者・施工者)も一覧として公開されるなど、安心して家づくりの検討ができるようになっています。
なにより注目すべきは、性能基準のレベルです。
HEAT20における4・5地域のG2グレード相当を「T-G2:推奨レベル」、G3グレード相当を「T-G3:最高レベル」と定め(T-G1:最低限レベルもあります)、レベルに応じた助成額が示されています。
(詳しくは下記の鳥取県のHPをご参照ください)
https://www.pref.tottori.lg.jp/293782.htm
そしてお次は、北九州市!
「「北九州市住生活基本計画(改定素案)」に対する意見の募集について」というタイトルのパブコメ(公開意見募集)の資料中にて、「北九州市健康省エネ住宅推奨基準(案)」が公表されています。
こちらでは、断熱等級6を超えるUa値0.40前後、BEI0.65前後、C値1.0という基準内容(案)が示されています。
(公開意見募集(パブコメ)のサイトは下記より)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/ken-to/07400038.html
(基準案資料はこちらのP.68(2枚目に出てきます)をご参照ください)
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000997546.pdf
以上、これらの2つの事例で顕著なのは、
・求める断熱レベルはいずれも等級6を上回る
・どちらも気密性能はC値(隙間相当面積)1.0㎠/㎡以下が求められる
という点です。
それぞれの自治体が独自に策定した制度において、最低限として求めるのがC値1.0以下というレベルであるという事実は、これが今現在の「当たり前」になりつつありますよ、ということを示していると感じます。
その「当たり前」を求められた際に、自信を持って応えられるようにしておきたいですよね?
■そもそも性能のニーズはあるの?
「いやしかし、ウチに連絡をいただくお客さんからは性能の話なんか出てこないし、家づくりでそこまでのニーズ(需要)があるんですかね?」
もしも、本気でそう考えておられる会社があるとしたら、それは「あなたのところには無い」というだけかもしれません。
お客さまから「性能についての問い合わせが無い」という場合、次の2つの状況が考えられます。
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