さて、引き続き「外皮について」というテーマで、「省エネのキホン」的考察を進めたいと思います。今回は外皮を支える構造との関係について、です。■揺れる木造住宅「第10回 外皮について(2)」では、断熱材はどのような材料を使うにしても、まずは「できるだけ熱の移動を遅らせて、室内外の温度差を保つ」という「断熱材本来の役割」を果たしてもらわなければ本末転倒になる、とお伝えしました。そして「本来の役割=本来の性能」を阻害する要因として、たとえば充填断熱材などを無理やり押し込んだりする不適切な施工をすることで、断熱性能が著しく下がるという例を挙げました。加えて、断熱性能は気密性能も伴ってこそ発揮される、ともお伝えしています。ただし、これらの性能と施工状況が取り沙汰される考察は、あくまで躯体が動かず、静止しているという前提のはずです。こう書くと、しっかりとした建物を作るのだから固定した状態を前提とするのは当たり前ではないのか?と思われる方がほとんどかと想像します。ところが、実は住宅は「揺れる(動く)」ことが前提とされています。揺れる?前提?どういうことでしょうか。木造住宅の耐震性を確保する一番重要な要素として、柱・梁・床などに固定されて働く「耐力壁」の存在があります(2x4工法はじめ他の「壁式工法」もありますが、ここでは木造軸組工法についてお話します)。そして建物の規模や高さに応じた各階が負担する合計重量から、地震によってもたらされる水平力、いわゆる地震力の大きさが決まります。もっとシンプルに言いますと、建物重量に比例した地震力が働く、ということになります。人間にたとえますと、地震時には体重に応じて揺さぶられる力が違ってくるので、体重が重い人には軽い人よりも多くの地震力が働くというイメージです ..
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一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。