札幌のリノベーション専門の工務店「アルティザン建築工房」新谷孝秀さんと設計事務所「アトリエ momo」の櫻井百子さんが、YKK APとコラボレーションして、通常よりも断熱性能と耐震性能を向上させる戸建リノベーションのプロジェクトに取り組みました。
家で消費するエネルギーと生産するエネルギーを相殺する「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」は周知のことになりつつありますが、今回目指しているのは、「LCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)」相当。その家を建てることにかかるCO2の総量をマイナスにするとても厳しい基準です。
日本で一番厳しい気象条件の北海道で、この基準をクリアすべく、UA値は0.18W/㎡・K。さらに耐震等級は3級を目指している。「ちょっとやりすぎなんじゃないの?」なんて声も聞こえるかもしれませんが、これは日本のストック住宅がどこまで性能を上げられるかという大挑戦とも言えるでしょう。第一回はそんなお2人が、どんなことを思い、性能向上リノベーションを手がけているかを伺いました。
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ー ストック時代のベンチマークとなるリノベーションプロジェクトが始まってますが、そもそも新谷さんは、なぜリノベーション専門になられたのですか?
新谷 会社員だったときは、新築もリノベーションもやっていました。独立した時も、仕事がないと困るから「どっちもやれます」って言っていたんですよ。でも、なぜかリノベーションばかり担当することになった。それだったらリノベーションの専門としてやっていってもいいかなって思ったんです。
左:設計事務所「アトリエ momo」の櫻井百子さん 右:「アルティザン建築工房」新谷孝秀さん
ー そのころから、周りとの差別化を戦略的に考えていたんでしょうか?
新谷 そうですね。今でも年に1回くらい新築を建てます。リノベーションの相談から結果的に新築になったケースです。相見積を取ってるお客さんには「1回は見積もりを出しますから、箸にも棒にもかからなければ、断ってください」とお願いしています。同業他社との比較で一番良い条件にならないと決めてもらえないし、それになれない可能性もある。それなら最初から指名で私を選んでくれるお客さんを大事にしたいので。
櫻井 金銭的には、新築よりも安くできる場合がに多いですよね。実績のある人に頼めば、新築に負けないくらいプランの自由度もありますし。リノベーションはお客さんにとっても良い選択肢だと思います。
新谷 新築もリノベーションもできますって人は、だいたい新築に誘導しちゃうんです。やりやすいからって。新築とリノベーションの比較見積もりも大して変わらない金額で提示したりする。でも、リノベーションは、新築に比べて3割くらいは安くできます。
櫻井 全体予算が2000万円だったら、600万円違いますからね。かなり大きいですよね。
新谷 ええ。リノベーションにしてコストを抑えれば、お客さんが住めないだろうと思い込んでいた便利な場所や、環境のいい場所に住めるようなります。
櫻井 リノベーションにすると、この家みたいに一つひとつの部屋が大きくてゆったりしてますよね。敷地に制約があったりすると、新築ではなかなかできないことがあります。築何百年の家を直しながら住んでいるヨーロッパの人たちは、建物にはお金をかけず、その分のお金を暮らしにかけて、人生楽しんでいるのだろうなと思います。
ゆったりと広いキッチンと脱衣室。寝室や踊り場も圧迫感がまったくない贅沢な空間になっている
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