今回から換気システムについてのお話です。
2003年の法改正以降、居室の24時間換気システム設置が義務付けられていますので、あえて採用の是非を考えることは無いでしょうが、「省エネのキホン」的な視点からの考察をお伝えしていく所存です。
■換気システム選択のポイント
いきなりタイトルにこのように書きますと、
「さあ、1種か3種か、熱交換は全熱か顕熱か、ダクトの経路は、ダクティング方式か躯体チャンバー併用方式か、アクティブ換気かパッシブ換気か」等々、さまざまに思いをめぐらされているかもしれません。
いや、めぐらせていますよね?
私だって読む方に回ればそうですから(笑)!
しかし「省エネのキホン」では、そのような路線では進みません。
逆に、この限られたスペースでは各仕様に関する詳細解説などの深掘りには至りませんので、より具体的な学びは、他の場でじっくりと取り組んでいただきたい所存です。
それでは、大見得切ったタイトルに対して、まず何を語るのか?
実は、本連載の第1回「省エネ」は誰のため?で既にお伝えしているんです!
エコハウスの各仕様を検討するにあたり、1番重要視すべきは
「住まい手ファースト」の視点
だということで、例えの1つとして換気システムを挙げています。
(以下、第1回の該当箇所より抜粋)
「そしてもう1つ大事なことは、省エネ化は「住まい手ファースト」の視点で進めるべきだと考えます。
たとえば1つの例として「換気システム」を選ぶのに、どういう点を考慮して選んでいますか?
熱交換タイプの温度交換率や、ダクト式ならダクト径など、気になりますね。
確かに、機器本体の性能も重要です。
でも、もし住まい手によるフィルター掃除が適正にされなければ、そのような初期性能はすぐに低下して、「電力の無駄遣い」で「能力不足」の役立たずな機器になってしまいます。
そうならない為の掃除をするのに毎回、「脚立に乗って・天井点検口を開けて・換気扇本体のフィルターを頭上で引っ張り出して」という作業が必要では、定期的にするのもおっくうになってしまいます。なにより転倒の可能性もあり、危険です。
そうではなく、お掃除のついでに普通に床に立ったままで、換気扇本体やフィルターBOXに容易に手が届くような製品を選ぶことで、住まい手の日常的なメンテナンスを促し、結果として継続的な性能発揮が可能となります。」
(以上、抜粋終わり)
当たり前ですが、竣工時にちゃんと収まっているかなどという低い次元ではなく、住み続けている間は求められる性能をずっと発揮できるかどうかが重要なポイントで、その実現を大きく左右するのが住まい手への配慮、「住まい手ファースト」の視点だと言えます。
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一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。