今回は壁のなかなどの隙間を塞ぐ「気流止め」の施工について解説する。第2回でも簡単に説明したが、壁の上下の隙間に圧縮グラスウールなどを詰めて塞ぐことで、壁の中を空気が流れることがなくなり、夏場の天井からの熱気や、冬場の床下からの冷え込みなどの直接の影響を受けなくなり、既存の断熱材が効くようになる。
壁の隙間があると壁面などの温度ムラが生じるため、快適性も損なわれる。気流止めを行うことで、全体として熱環境が向上することに加え、居住性も高まるので、丁寧に施工し、最大限の効果を得るようにしたい。
気流止めのなかでも特に重要なのが間仕切り部分だ。築20~30年の建物はもちろん、最近の建物でも間仕切り部分で、床や天井の断熱・気密ラインが切れてしまっている事例が散見される。この部分を気流止めにより補うことは非常に重要だ。念のために付け加えるが、これは床断熱・天井断熱の建物を念頭に置いた話である。最近の高断熱住宅で一般化している基礎断熱・屋根断熱の建物の場合、基礎と屋根部分が断熱ラインとなるので、間仕切壁の空隙は問題にならない。
■気流止めは床下からの施工が大変
気流止めの施工性は小屋裏と床下では大きく異なる。小屋裏からの気流止めは、一般的な下向きの姿勢での作業になるので施工性はよく、スムーズに進むだろう。問題は床下だ。床下は高さがなく、さらに作業の姿勢が上向きとなるので、施工性はよくない。また建物によっては地面が露出して湿気が多かったり、かび臭くなっているなど、長時間作業するのが難しい環境だ。
天井から壁の空隙に気流止めを施工したところ
床下から気流止めを施工したところ。ピンク色の部分が施工部分
そうした難条件であって、隙間はしっかり詰めるのが基本となる。気流止めを施工する際の注意点としては、断熱材を充填している外周壁の隙間だけでなく、間仕切壁の隙間も埋めることだ。
間仕切り壁の隙間を既存のままに放置しておくと、床下の冷たい空気が間仕切り壁を介して小屋裏に流れ込んで、小屋裏に敷いた断熱材を冷やすなどの悪影響を与えてしまう可能性があるためだ。このように流止めは作業上の難しさはそれほどないが、施工の丁寧さが求められる。
次回は気流止めに用いる材料について解説する。