(こちらの記事は「弁護士法人匠総合法律事務所ニュースレター」からの転載です)契約直前の顧客からキャンセルの連絡を受けた場合、かかった実費の請求をすることが出来るか?(弁護士法人匠総合法律事務所 代表社員弁護士 秋野 卓生)例えば、契約締結直前の顧客との間で、「では、来週の日曜日に請負契約を締結しましょう」とお約束をしていました。当社では、当然、契約を締結してくれるものと考え、少しでも作業を進めようと土地の測量や地盤調査、各業者への発注を済ませていました。しかし、連日のコロナウイルス感染症の報道から顧客の家づくりに対する意欲が減退してしまい、契約予定日の前日になって、顧客から「やっぱり契約はしない」と一方的な通告を受けてしまいました。この場合に、住宅会社は顧客に対し、かかった実費の請求をすることはできるか?という論点について検討します。1 未契約であるが故の悩み建築請負契約が有効に成立してれば、民法上の規定にしたがって、契約上の義務が発生し、契約に基づく代金支払請求や契約上の義務違反に基づく損害賠償請求をすることが可能になります。では、契約を締結していない段階ではどうでしょうか。契約を締結していない場合には、契約がないのですから、何の請求もできないことが原則となるはずです。しかし、他方で、建築予定者が間違いなく建築工事を発注するような言動を取りながら、契約書を取り交わす段階になって、突然契約の締結を拒否した場合のように、一方当事者に不誠実な点がある場合には、それを信頼して工事の準備段階に取りかかっていた相手方の損害を賠償させないと極めて不公平です。2 契約締結上の過失(1)契約締結上の過失の意義契約締結段階に入った当事者の関係は、何ら特別の関係のない者との関係よりも密接な関係にあ ..
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