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2022/06/20 07:00 - No.1171


パネリストVoice02 井上隆さん|省エネ・創エネのその先へ カーボンニュートラルなまちづくりへの挑戦


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カーボンニュートラルなまちづくりへの挑戦
A-PLUG 事務局

2022/06/20 07:00 - No.1171

 
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井上隆 さん(東京理科大学 名誉教授、パッシブデザイン性能評価員会 委員長)

▼はじめに


2021年11月2日、富山県黒部市で、各専門分野の有識者が参加して座談会が開催されました。テーマは「パッシブタウン -省エネ・創エネのその先へ  カーボンニュートラルなまちづくりへの挑戦-」です。当記事は、その座談会の内容を一部切り取ってご紹介する内容となっております。

連載1本目では
座談会全体について、続く2本目の記事からは座談会にパネリストとして登壇いただいた有識者の方のコメントを「パネリストVoice」と題し、記事化してお届けております。そして、今回は、東京理科大学 井上隆 名誉教授のコメントです。

※座談会のポイントをまとめた冊子(PDF)はページ最下部にて閲覧いただくことが可能です

外皮性能の向上を基本に脱炭素化新技術の最適化に期待


Q&A
前期街区の成果をどう評価されますか。また第5期街区で重視すべきポイントは何でしょうか

高性能窓・外皮が担保する快適空間
住宅における外皮性能の重要性 ー
これまで性能評価を通じてパッシブタウンに関わる中で、私がまず実証を試みたのがこの点でした。特に重要なのは、窓の断熱性能を高めることです。



一般に外壁や屋根の断熱に比べ、開口部としての特性を持つ窓の断熱化は難易度が格段に高くなります。単板ガラスなど断熱性能が低い窓の場合に発生する、冷えた窓面からのコールドドラフト・冷放射、大きな上下温度差、窓周り結露などの不具合は実験や実測調査でも示してきました。単に暖房エネルギー消費の増大を招くのみならず、その制御も厄介な上、何より快適性・健康性が大きく損なわれます。

これに対して本パッシブタウンでは、外壁はヒートブリッジ対策を 講じた外断熱とした上で、窓は、真空ガラスやLow-Eガラスを組み込んだトリプルガラスと樹脂枠からなる高性能樹脂窓が採用されています。

夏期・中間期に注意すべき日射遮蔽についてもパッシブデザインでは様々な配慮がなされています。これらの効果について3年にわたる室内環境・エネルギー消費等の実測、アンケート調査に基づき、採光・眺望・通風の確保が可能な大きな開口を有する住宅においても、室内の温度分布は極めて小さく抑えられ足元・窓際の寒さも軽減されるなど前述の懸念を実質的に解消することが可能であること、エネルギー消費を抑えつつ年間を通して快適な環境が確保されることなどを実証することができました。


住まい方に柔軟に対応する効率的で安全なシステムを
かつて住宅のエネルギー消費についての大規模アンケートで「ご自宅での年間のエネルギー消費量で最大の用途は何であると思うか?」を4肢択一で尋ねたところ「冷房」、「暖房」との回答が最も多く各々4割弱でした。しかし実際の消費量データの分析では、多くの世帯で 最大なのは「給湯」であり年間消費量の約4割、次いで「照明・家電 等」が占めるという結果でした。しかし実際は「暖房」は約2割程度、「冷房」に至ってはその10分の1程度でしかありません。



また、地域や世帯人数が同じでも消費量には倍以上のばらつきがあること、別途行った給湯実測調査でも同様にライフスタイルにより給湯量にさらに大きなばらつきがあることを把握しています。

このように、自宅のエネルギー消費でさえ正しい把握ができていないのが実態です。しかも住まい方によって大きなばらつきがある、このような住宅の特性を踏まえたインフラについて考える必要があります。エネルギー需要を季節・時刻・用途ごとに把握し、安全で快適な暮らしを環境負荷の小さいエネルギー供給システムで支えることが大切です。生活の場である住宅においては安全性の確保に細心の注意を払いつつ、新技術の導入と運用を通してその最適化を図ることで、次世代に継承すべき貴重な知見を導き出すことができるのではと期待しています


※当記事に添付した冊子PDFより抜粋





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