A-PLUGのご利用には会員登録が必要です
すでに会員の方はログインください

2022/08/03 13:00 - No.1211


第23回 外皮編「気密性能について(6)」


省エネのキホン
堤 太郎

2022/08/03 13:00 - No.1211

 


引き続き「外皮」をテーマとして「省エネのキホン」的考察を進めます。今回も「住宅の気密性能」に関する内容です。
(前回記事は こちら

毎度のことで恐縮ですが、まずはおさらいから。

連載の第19回で、過去の省エネ基準でも挙げられていた4項目に「省エネのキホン」的2項目を加えたのが下記の6項目です。

1.「漏気(隙間風)を防止して暖冷房負荷の低減、省エネ性、快適性の向上」

2.「断熱材の性能低下の防止、省エネ性、快適性の向上」

3.「繊維系断熱材採用の場合の室内側気密化による防湿効果で壁内結露を防止、耐久性の向上」

4.「計画換気が成立するための出入り口の明瞭化と必要風量を確保し、健康性、省エネ性を向上」

5.「現場測定による数値化で1棟毎の施工精度を証明」

6.「購入者が依頼業者を選ぶ際の住宅性能における重要な指標」


今回は、この中の3.の続きです。

建物の気密性が低いとなぜ、壁内結露につながり、耐久性の低下につながるのか?

結露とは、水分子である水蒸気が水になることです。
であれば、水蒸気をコントロールすればよいのでは?と考えるのが、普通なのですが、なかなかそれが徹底されていないのが実態です。

その一番の原因は、水蒸気のサイズではないでしょうか。取扱いに際して、どの程度の対処まで必要かというイメージが付かないくらいのレベルだということです。


■やっぱり手ごわい?「水蒸気」

前回は水が水蒸気の状態にあるときの個々の分子のサイズがいかに小さいか、という図もお見せしましたが、なんと!本文共で水蒸気サイズの桁数を間違えていましたので、訂正しますと共に、改めて掲載します。


加えて、数字だけが並んでも今ひとつ、分かりづらい感が自分自身でもありますので(笑)、さらに身近なもので比較してみましょう。

・PM2.5(2.5μm) ※ちなみにタバコの煙の粒はPM1.0です
    ↓約1/25に縮小する
・ウイルス(約0.1μm)
    ↓約1/250に縮小する
・水蒸気(H2O)(約0.0004μm)

と書くと少しはイメージいただけますでしょうか。
ここ数年、テレビでよく映し出される、あのウイルスを直径25センチの大きさのボール大に拡大しても(この場合、PM2.5は直径6メートル)、水蒸気は1ミリの粒でしかないのです!

その水蒸気分子が毎秒600メートル近い平均速度(25℃・1気圧の場合)で、周囲のあらゆる物体にぶつかりながらバラバラに動き回っているのが室内空気の実態です(それ以外の分子も温度に応じて振動しながら同様に動き回っています)。
そして、次の項目でお話する圧力差に応じて、あらゆる隙間にも入り込んでいくことになります。

そのようなミクロの世界を相手にするということは、とても生半可なことでは太刀打ちできない、ということは感じていただけるかと思います。


■まずは室内側の「水蒸気」を壁に入れない

連載の第8回で、「熱は常に高い方から低い方に伝わり続ける」とお伝えしましたが、実は水蒸気にも同様の性質があり、水蒸気量の多い(水蒸気圧が高い)方から水蒸気量の少ない(水蒸気圧が低い)方に移動しようする性質があります。
空気の温度や対流(気圧)との関係によっても条件がさまざまに変化しますので単純ではないですが、移動の度合いは圧力の差が大きいほど多くなります。

その性質を住宅に当てはめて考えますと、

 
堤 太郎
一般社団法人 みんなの住宅研究所

一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。

業務にあわせて効率UPができる
ツールをご提供!

お知らせ

各種お問い合せ

 2年以上前

イベント・セミナー全て見る>