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2022/08/30 13:00 - No.1218


第24回 外皮編「気密性能について(7)」


省エネのキホン
堤 太郎

2022/08/30 13:00 - No.1218

 


引き続き「外皮」をテーマとして「省エネのキホン」的考察を進めます。今回も「住宅の気密性能」に関する内容です。(前回記事はこちら

まずは毎度のおさらいから。

連載の第19回で、過去の省エネ基準でも挙げられていた4項目に「省エネのキホン」的2項目を加えたのが下記の6項目です。

1.「漏気(隙間風)を防止して暖冷房負荷の低減、省エネ性、快適性の向上」

2.「断熱材の性能低下の防止、省エネ性、快適性の向上」

3.「繊維系断熱材採用の場合の室内側気密化による防湿効果で壁内結露を防止、耐久性の向上」

4.「計画換気が成立するための出入り口の明瞭化と必要風量を確保し、健康性、省エネ性を向上」

5.「現場測定による数値化で1棟毎の施工精度を証明」

6.「購入者が依頼業者を選ぶ際の住宅性能における重要な指標」

今回は、この中の4について考えましょう。

建物の気密性が低いとなぜ、計画換気が成立せず、健康性、省エネ性の低下につながるのか?

健康性、省エネ性については他の項目とも共通する内容ですが、建物の省エネ性能が向上するほど「計画換気」の影響度が増すということでもあります。

どういうことでしょうか。


■「省エネ」を邪魔するもの

この連載のタイトルを「省エネのキホン」としている以上、本来必要になる以上に「無駄なエネルギーを垂れ流す」ことにならないよう、お伝えしていく必要があります。

そもそもはシックハウス対策をきっかけとして、建築基準法改正(2003年7月施行)により「24時間換気システム設置」が義務化されましたが、設置と同時に最低限必要な換気回数も定められました。
ご存じのように、住宅の居室等は1時間に対象空間の半分以上の空気が入れ替わるように、という意味で「換気回数0.5回/h以上」の性能が求められます。

換気とは文字通り、「室内の汚れた空気を室外の新鮮な空気と入れ替えること」です(必ずしも機械換気にばかりに頼らず、気候が良い時期や急ぎ換気をしたい場合は窓を開けての自然換気も有効ですが、雨や花粉などで難しい場合もありますので、まずは機械換気を前提で)。

この換気が十分に行われないと、
・CO2濃度上昇による集中力低下等の健康低下
・室内で発生する水蒸気の増大による結露やカビの発生
・ハウスダストの増大によるアレルギー疾患
・内部生活による臭気の充満
・日射侵入などによる温度上昇(オーバーヒート)
・シックハウス症候群(建材からの放散がかなり改善されたホルムアルデヒド以外にも要因となるVOC:揮発性有機化合物は存在)
など、さまざまな不具合を引き起こす可能性が高まります。

そこだけを取り出して、「だから住宅は高気密ではダメで、適度な隙間がある中気密程度がよいのだ」というような意見がいまだに出てくることがありますが、それは根拠のないイメージだけの発想です。

なぜなら、気密が低い状態で空気は意図した通りに動かないからです。

連載の第20回で、住宅の室内外には、(換気システムとは関係なく)常に温度差や風速による圧力差が生じている、とお伝えしました。

窓を閉めて暖冷房が稼働している状態では、室内のあらゆる箇所で勝手に空気が出入りしようと圧力が働いているのです。
そのような中で換気システムを稼働させても、机上の計算で設計したようには空気は動いてくれません。

特にコスト面から一般的に採用されることが多い第三種換気システム(機械で排気を強制的に行い室内を負圧にすることで給気口から自然給気するタイプ)では、ひどい場合は排気口付近でのみ空気が動くというショートサーキットを起こして、その他の空間は空気がよどんだまま、という状態に、、、


これではいくら換気システムを動かしても、先に挙げた不具合は改善しませんね。

加えて見ていただきたい資料があります。
まずは第三種換気システムとC値の関係を示したグラフです。


換気量を160㎥/hで設計した住宅で、C値によって漏気を含む全体の換気量がどう変化するかを計算したグラフです。
内外温度差が20℃と普通にありえる条件で、C値が1.0㎠/㎡(以下、単位は省略)未満ではほぼ変化が無いのに、C値が2.0で約170㎥/h(1.063倍)に増加、C値が5.0では約230㎥/h(1.43倍)と大きく増加しています。

この現象は第三種タイプだけではありません。
こちらも一般的に用いられる第一種換気システムの場合のグラフです。

 
堤 太郎
一般社団法人 みんなの住宅研究所

一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。

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