さて、引き続き「外皮について」というテーマで、「省エネのキホン」的考察を進めたいと思います。今回も断熱材についての続きです。■壁の内部で避けるべきコンディションとは前回、断熱材はどのような材料を使うにしても、まずは「できるだけ熱の移動を遅らせて、室内外の温度差を保つ」という「断熱材本来の役割」を果たしてもらわなければ本末転倒になる、とお伝えしました。そして「本来の役割=本来の性能」を阻害する要因として、たとえば充填断熱材などを無理やり押し込んだりする不適切な施工をすることで、断熱性能が著しく下がるという例を挙げました。今回は、さらに別の要因として、壁内断熱部の「水」の存在を取り上げます。まず、なぜ「水」が壁の内部に存在してしまうのでしょうか?たとえば、・屋根、外壁、下屋など外回りの設計・施工に問題があり、雨降り時、特に強風と合わせて雨が降りつけるような場合に、雨水が屋根・壁の内部に侵入する状況ができている・経年劣化により、外壁材やサッシ周りのシーリング・コーキング材に切れが生じて雨水が侵入し、通気層から下に排出できない分が、釘穴等何らかの経路を通じて躯体内部へ侵入する状況ができている・建物の施工途中にかなりの雨に降られ、土台や柱等の構造躯体が濡れたにも関わらず、十分な乾燥をする前に断熱材・仕上げ材を施工した為に、壁の内部に多量の水蒸気が閉じ込められて、寒暖差の条件により(初期の)内部結露が起きやすい状況になっている(構造材に「未乾燥材」を使用した場合も程度は別として、同様になり得ます)・冬場の気温が低い時期に、室内で大量に発生する水蒸気が外壁内部にも侵入するので、室外側の温度が低い(結露が発生する露点温度以下の)位置で結露し、水の状態で溜まる状況ができている・夏場の気温と湿度が ..
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一般社団法人 みんなの住宅研究所 代表理事/株式会社 M's構造設計所属。一級建築士、CASBEE戸建評価員、BISほか。1966年奈良県生まれ。1990年摂南大学工学部建築学科卒業。関西商圏のビルダーに27年勤務し、主に2x4工法(枠組壁工法)の戸建住宅設計に携わる。2013年にドイツのフライブルクをはじめとした各地の研究機関・企業等をツアー視察した後、ATC輸入住宅促進センター(大阪市)主催の省エネ住宅セミナーにて、企画のアドバイスやパネルディスカッションのコーディネーターとして複数参加。2018年にM’s構造設計に参加、「構造塾」講師や「省エネ塾」の主催、個別コンサルタント等を行っている。